周囲を海に囲まれた我国は古来より海の恩恵を享受してきた海洋国家です。戦後は造船、海運、漁業などの海洋産業が国の復興、発展に大きく貢献してきました。
しかし近年は海外との競争激化のため、これらの産業は厳しい状況にあります。一方、国は海洋基本計画を策定し、海洋科学、海洋産業の振興に努めており、
2013年4月には海洋基本計画が見直されました。新たな海洋立国を目指すために、世界をリードする海洋基盤技術の開発、新海洋産業の振興・創出などが謳われ、
日本の広大なEEZ確定を踏まえて未来の日本の発展を目指すこととなりました。
また、2011年福島第2原発事故を背景にしながら、2020年12月、我が国も2050年にはカーボンニュートラルを実現するとの宣言を世界に向けて発信いたしました。
加えて2022年2月にはロシアによるウクライナ侵略に伴う世界的、エネルギーと食糧危機が危惧されるなかで、我が国の政策も大きく転換を余儀なくされようとしております。
これらを踏まえると、世界6位の面積を持つ広大なEEZを生かした、海洋再生可能エネルギーと循環型海洋生物資源の開拓は次世代の新しい産業システム開拓が大いに期待されます。
このような方向に向けた海洋産業分野開拓のための計測センサの現状と将来の姿を調査し、課題を明らかにしながら、
新しいビジネスモデル描出と将来への施策提言を目的として海洋計測センサ技術研究会は活動いたします。
本研究会は2014年に設立され、会員企業メンバー、事務局メンバーによる、現状と課題に関する調査、外部有識者をお招きしてのヒアリング調査、研究機関、
生産現場等に関する現地調査等を進め、毎年の活動報告書作成を実施しております。最近では調査対象の中から重点領域を絞り込み、
プロジェクト活動展開の方向を模索する動きも取り始めております。このためには、産学官連携も大変重要となり連携活動強化も進められてゆきます。
あわせて、原点に立ち返って新しい分野に焦点を合わせた調査研究も常に対象として取り上げてゆきます。これらの計画を実現するためには海洋からの様々な情報を得る
「海洋計測センサ」は必須の基盤技術となります。海洋計測センサは陸上の計測センサと比較して海水などによる腐食性等の厳しい環境条件に加え、
遠洋や深海などの設置環境、信号伝送方式、給電方式などの課題を抱えています。様々な課題を克服し、高付加価値の計測センサとそのシステムを提供することは海洋関連産業の発展に寄与し、
大きな市場の開拓に繋がるものと期待されます。
次世代センサ協議会のなかの「海洋計測センサ技術研究会」は企業の立場から海洋技術分野における計測センサの現状と将来を調査し、
課題及び将来への施策を提言することを目的といたします。インダストリーX・DXに代表される産業分野のIoT、車の自動運転の技術開発等に関心が集まり、
諸種の取組みがなされています。産業や社会の大きな変革が期待されています。これらの中で中核を成すのが言うまでもなく計測センサ技術です。
海洋においても同様の動きが始まっています。特に船舶のIoT化による運航効率の向上などによる費用の削減、自動化による人員の削減など大きな効果が期待されています。
また、カーボンニュートラル宣言によって、過熱化が考えられる大規模洋上風力発電システムにおける無数の巨大風車軍を統率する膨大な数のセンサと統合制御システム構築は喫緊の課題です。
本研究会はこれらの動きに気を配りながら、さらにその先のあるべき姿に対しても大いに議論し、その中から参加メンバー、参加企業のお役に立てればと考えている。 |