スコットランドとの連携活動 |
Ⅰ はじめに
スコットランドがセンサエキスポジャパンに出展したことをきっかけに次世代センサ協議会との連携が始まり、日本からもスコットランドで開催されるSubsea Expoに人を派遣して毎年交流をつづけている。
Mr. Scot Wilson (Scotland政府) の尽力が大きい。 1 連携の内容 (計画段階)
(1)研究連携: スコットランドと日本の大学で研究交流を進めたい。共同シンポジウム、研究者相互派遣、留学生相互派遣、共同研究など、大学レベルでの連携可能性を検討します。具体的候補テーマは Sub Sea 関連センサ技術の共同研究、 Health Care 技術開発、です。
(2)事業連携:スコットランドで開発されたセンサ技術・製品の日本での応用開拓あるいは事業担当企業の紹介をして欲しい。あるいは逆に、MEMS、Fiber
Sensor などスコットランドのSub Sea や Healthcare などで有効な新しいセンサ技術を日本から紹介したい。 2 Scotland の Sensor Systems 開発の体制スコットランドではセンサに関して国がビジョンとコンセプトを持ち、次の3機関が一体となってセンサ産業の振興に取組んでいます。 (A-1) Scottish Enterprise (SE) スコットランド開発公社
産業政策の立案を行っています。この中で、競争力を確立でき経済成長の可能性がある3つの技術分野の一つとしてセンサ技術を選定し、海洋エネルギー、医用、製薬などの選択した成長分野に活用するビジョンとコンセプトをまとめています。各分野で必要とするセンサシステムも選択しています。 SE の国際部門で実際の産業振興策を行います 。SDI では開発資金の補助、資金の導入の支援などを行っています。 連携の窓口は Japan office 松枝晃氏です。 (A-3) Innovation Center for Sensor and Imaging Systems(CENSIS)センサおよびイメージングシステムは多様な産業分野の基盤です。従来センサ関係の産学連携組織としてScottish Sensor Systems Centre (S3C)があり、大きな成果をあげていました。ここが2013 年6 月に発展改組されてCENSIS が設立されました。センターは大学と産業の研究開発のギャップを埋め、 技術の移転を促進して新たな製品をもたらすことを目指しています。ここには 12 のスコットランドの大学と業界の22の パートナーが参加しています。 グラスゴー大学が主導学術機関で、10 百万ポンドのコア資金を管理します。 3 連携活動の例
スコットランド政府のセンサ開発推進機関であるセンサイノベーションセンタ CENSIS*(グラスゴー大)と 2013年9月に覚書(MOU)を締結し、両国のセンサ技術発展のための連携活動を開始しました。 スコットランドの主要センサ・センサシステムの企業 45社の紹介 (2)スコットランド・次世代センサ協議会 MOU 調印式と共催セミナー (2013年9月) 「スコットランド最新センサ技術とCENSIS・次世代センサのコラボレーション」 (3)スコットランド センシング技術セミナー (2013 年12 月) =海洋センシング・システム化技術= (4)TechnoOcean スコットランド海洋産業セミナー(2014年9月/10月) (5)CIGS 海洋シンポジウム(2014年12月) (6)スコットランドと日本におけるSubsea分野の連携プラットフォーム作りに関する関係者会議(2015年5月) 4 参考資料(1) Scottish Key Sensor System Companies LIST ⇒ 旧版となりました
主要センサ企業 60 社の一覧表 (2) スコットランド企業データベース (スコットランド側が作成)
https://directories.scot/ |
Ⅱ スコットランド-日本 サブシー連携プラットフォームサブシー技術は海洋資源開発において未だに技術が確立されていない有望技術分野です。この分野ではスコットランドが現状では世界の市場の4割以上を占めています。我が国は世界第6位の排他的経済水域を有し、この分野での成長は我が国の将来を左右します。次世代センサ協議会は他の海洋関係の3団体と協力し、スコットランドとの技術連携・協力の活動に参画しています。この4団体が一体となって、スコットランドと協力して世界のサブシー分野の発展に貢献します。
スコットランドは北海で1960年代から石油やガスを生産しており、探査装置を始めとして海底資源生産用の技術を有しています。しかし、北海油田は1990年代にそのピークを迎え、石油ガスの開発・生産は更なる深海、極地化を目指さざるを得ません。その様な状況で、技術に対しては高機能、高信頼性、安全性が求められ、新技術の開発が必須になっています。 2015年5月20日に総合海洋政策本部の湯原哲夫参与(故人)、他の呼びかけで、スコットランドと日本の企業が連携してサブシー分野の開発を推進する組織の設立が提案されました。そこでは関連する4団体がプラットフォームを形成し、スコットランドの当該組織と情報交換をする仕組みを構築しました。
スコットランド側からサブシー関連企業の業界団体SUBSEA UK、その研究開発組織のNSRI: 、日本側から (一社)日本プロジェクト産業協議会、(一財)エンジニアリング協会、
(一社)日本舶用工業会)と(一社)次世代センサ協議会が参加しています。連携のコーディネーションはスコットランド国際開発庁(SDI)が担当します。全体の仕組みを下図に示します。SUBSEA UKは会員数
約300で海洋の上流から下流までトータルにカバーしています。これに対して日本側の企業約600社のうち海洋関連に関心のある企業が関連します。 |
SJ-PJT(スコットランド-日本 事業連携プロジェクト) (具体的活動と成果)
(具体的活動と成果)
現在この活動は休止中です。必要に応じて再開します。 |
Ⅲ 海洋再生可能エネルギーへの新しい動き2022年1月にScotWind 1 の 50GW の洋上風力発電の入札結果が発表され、脱炭素、再生エネルギー産業への動きを鮮明にした。
従来の組織名を変え、脱炭素、再エネへの動きをより鮮明にした。
① Subsea UKが ⇒ Global Underwater Hub に、
② Oil & Gas Authority(OGA)が ⇒ North Sea Transition Authority,
③ Oil&Gas Technology Center(OGTC)が ⇒ Net Zero Innovation Centre(NZTC)
④ Innovation and Targeted Oil and Gas Offshore Wind leasing Round(INTOG) が発表になった
⑤ なお Aberdeenでの展示会・コンファレンスはSubsea Expo の名称を継続して使う。Subsea Expoの情報は、講演の資料、写真、
ビデオ等がWebサイト上で公開されている。 |
CCS動向英国政府の 10ポイント計画では、CCUSへの£1 billionの投資をコミットしており、2020年代半ばまでに少なくとも2つの産業クラスターに、遅くとも2030年までに4つの 産業クラスターに展開するというものであった。 2021年10月に最初の2か所=Track1にイングランド東部のTeesside、the Humberと西部のMerseysideが指定された。当初クラスターの進捗状況からスコットランド・アバディーン州のAcorn project (https://theacornproject.uk/about/)が期待され有力視されていたが、結果指定にはならずReserved Clusterとして登録された。AcornはShellがメインのデベロッパで、 スコットランドのStoregga社とその子会社のPale Blue Dotが同じくデベロッパとして参加している。三井商事はStoregga社の株式の15.4%を所有している。
{注意}英国のエネルギーセキュリティ上記のようにスコットランドの脱炭素、再生可能エネルギの動きは着々と進んだが、ここにきて、ロシアのウクライナ侵略を受けて英国中央政府は 2022年4月 に British energy security Strategy を発表した。https://www.gov.uk/government/publications/british-energy-security-strategy/british-energy-security-strategy 主なシナリオは、Net Zero達成の為風力と太陽光の再生可能エネルギーへの依存に向かう事を基本とするが、北海での(主に)ガス生産を増加させる事、 再エネの発電量の変動を補う意味でも新たな原子力を導入すると言うものである。実際、既に取り組みが始まっているものばかりで10 Point Action Planと言う形でまとめられている。 これに対してスコットランド分権政府から意見書が出されており、北海油田の石油ガス増産及び原子力追加導入に反対し、以下の7点を要求している。 ●電力の脱炭素の加速(Power Gridへの投資を含む)●配電ネットワーク料金システムのリフォーム(再エネ事業者に有利に) ●CCSスコットランドクラスターの事業化加速 ●グリーン水素のビジネスモデルの確立加速 ●暖房のエネルギー効率の向上と脱炭素化 ●一般家庭の電力課金を見直し 暖房の脱炭素化の推進 ●交通の脱炭素化の加速。 上記は公にされている情報であるが、決着には至っていない様である。 このように未確定部分が多くなっている現状で、変化を常に確認しておくことが重要である。 研究会の企業会員になればこの辺の最新情報もSDI(スコットランド国際開発庁)を介して問合わせることができる。 |
Ⅳ 追記我が国では洋上風力発電(着床式、浮体式)に関し、開発、生産は行われていない。政府は「年間100万kW(1GW、原発1基相当)程度の区域指定を 10年継続し、2030年までに 10GW、 2040年までに浮体式も含む30GW~45GWの案件を形成する」となっている。これらは全て輸入に頼ることになる。従って 洋上風力発電用の計測センサの開発もあまり期待できない。 海洋計測センサ技術研究会としては、従来から関係の深いスコットランドとの連携を強化して技術面の支援をしたい。 参考資料スコットランド企業データベース (スコットランド側が作成)
https://directories.scot/ |